「あんな事あったけど良かったよな。二人とも仲良しのままでさ」


ヴァンは頭の後ろで手を組み合わせ話す。


「ああ、本当にそうだな」

と、ため息混じりで返すバルフレア、その隣にいたフランはクスクスと笑っていた。





a sermon





何かしようとする度に言われては流石に眉間に皺もよる。

「バッシュ!」

間違いなく言うであろう言葉を名前で遮りその顔に目線を向けた。

「心配してくれるのは嬉しいわ。でももう終わった事よ」

買出しに行くといって出て行こうとしたにバッシュが一緒に来てくれたのだ。
それまでは良かったものの、事あるごとに彼は私を心配する。


「済まない」

「悪気が無いのは分かるの、でもいつまでも気に掛けないで」

「ああ、そうだな・・」

「バッシュ」

「?」

「言ってるそばからそうやって気にしてる」

「そんな事は―」

「あるの。すぐ顔に出るタイプなのよ」

「・・・・・」

「もしかして知らなかったの?」


前を向いて歩き出したバッシュの横に並びその顔を見上げた。

相手の事をこれほどまでに気に掛けることが出来るのに、自分の事にこうも疎い人は珍しいのではないだろうか。
生真面目というか何と言うか。。。



「ならこうしましょう、今度その言葉を口にしたら。。。そうね、、」

考え込んだはにっこりと笑いこう答える

「キスをする。その場所がどこであってもよ」

「それは駄目だ」

「言わなければ問題ないわ。そうでしょ?」

「だが」

「そうさせたのは誰だったかしら」


思い付きとはいえあまり良くない提案だったかもしれないと今更思った。
とはいえ間に受けているのかそれ以降、少々言動がぎこちなくなってしまったバッシュ。

気に掛けてくれたり、優しく言葉をかけてくれる事は嬉しかった。
でも、何だかそれが心苦しかったりもする、気を使わせてしまってるようで・・・。

買い物をしながら話をしたり普通の事を見聞きするのが二人で居ると楽しく感じられるようになれたのだ。
こうやって自然体でいてくれればいいのに、というのが彼は分かってくれるだろうか。

私に位は気を使わないで欲しい、とそう思うから―





「もうそろそろ帰ろうっか」

「ああ、そうだな」

「ねぇ、バッシュ」

「ん?」

「今日楽しかったね」

「俺もそう思っていた」

「じゃあまた今度一緒に買い物行きましょうね」

「ああ、もちろんだ」

にっこりと笑うの顔を見ながらバッシュも同じように口元に笑みをうかべていた。

それを羨むように間に割り込み吹き抜けた風は砂埃を立てて通り過ぎてゆく。
咄嗟に目を瞑っただったが防ぐ事が出来ず目元を押さえ下を向いてしまった。


「ゴミが目に入っちゃった・・・」

「大丈夫か、?」

「ええ、大丈・・・・―」

途中で途切れる言葉とともに上げられた顔。その表情に自分が言った事を思い出しハッとするバッシュ。


「・・・・・・・あ、、」

「バッシュ。。」

「だが、これはっ―」

「でも言ったわ」

弁解しようとするバッシュは今までに見たことがないくらい動揺をしている。
まして自分が近づけばより一層顔を強張らせ身を引くのだ。

それに耐えきれずは口元を押さえて歩き出して行ってしまった―







・・っ」

「だって、可笑しいんだもの」

その笑いは部屋に戻ってきても収まらず、彼女は涙目になっている。
人の身に起きた事を無邪気に笑うのだ、それも人の顔を見ながら。


「笑える状況ではない。。」

「でも、約束どおりして貰おうかな。人前ではしてもらえないのは分かっていたし」

「―!」

椅子に座っているバッシュの元に歩み寄り、前かがみになりながら顔を近づけようとする。
目を逸らす彼だがやはり言ってしまった事は認めているのか逃げようとはしなかった。



「なんてね、あの時は咄嗟にそう思ったから言ってくれただけでしょ?」

「。。。。」

「私は、あの事を引き合いに出すように心配されるのが嫌だったの。
これだけ自由に動いているのにそれでもバッシュは気にするでしょ?
何だかそれで貴方の事を束縛しているみたいだから」

「そんな事はない。ただはあまり自分の不調を言ったりはしないだろう」

「あまり言いたくはないわ。それはバッシュもそうでしょ?」

「・・・・それは」

「もし私がバッシュの立場ならきっと心配する。大丈夫って言ったり気に掛けたり、同じ事していたと思う。
自分勝手だけど、でもそれが反対ならバッシュはどう思ってもらいたいかなって」

「きっと、君と同じように思うだろうな俺も」

「なら、和解しましょう?」

「ああ、そうだな」

「本当にそう思ってる?」

「疑っているのか」

「うーん、少し。念のためもう少し続けてみる?」

「いや、、、それは困る」

「なんだ、残念。それを口実にキスができると思ったのに」

「―っ!!」

「とりあえず、さっきの分はしましょう、ね?」

「違うのなら無効だろう?!」

「言ったら駄目っていったのよ。有効よ。早くしないと皆来ちゃうわよ」

「〜・・・・・・・だが・・」




廊下を歩く足音と聞き覚えのある笑い声が聞えてきた。
それに気付いたはバッシュの両肩を掴みにっこりと微笑む―


「残念だけど、時間切れね」


その言葉にホッと胸を撫で下ろしたバッシュ。しかし突然の出来事が彼を襲った。


目の前にあるの顔、自分の口元には温かく柔らかい彼女の唇が触れている―

その感覚にまたも驚き強張った体、満足そうに唇を離したはクルリと体を翻し、
扉を開け入ってきた皆向けて笑顔でお帰りと言っていた。

唖然とし俯いてしまったバッシュを見たバルフレアはに尋ねる。



「何したんだよ、お前」

「別に。ただ、余りにも心配しすぎるから説教しただけよ??」


そう言ってバッシュの方を向いては楽しそうに笑った――